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鳥山…他には「じびりや」「おとぼらい」です。前者が旧七月におこなわれるお盆のような行事で、後者は殉教者の供養で十月二十日に行い、その時はサンジョワン様やローマの国のエステワン様、土佐の国のダイソウワン様などを神降ろしします。
谷川…禁忌の習俗はあったのですか。
鳥山…今は信仰しやすいように改善されました。昔は、日曜日には薪木のねだわし(薪切り)や種まき、下肥を扱うことはできなかったのです。
谷川…日曜日は休みなんですね。

 

◎風土化した手作りの聖書◎

馬場…若い人が隠れキリシタンの信仰を受け継いでいくのが辛くて行事をやりたがらない。どうやって伝えていくか私には興味があります。宗教ですから、公開することは好ましくないと思いますが、隠しておく必要がなくなってきた現代、若い人に公開していかなくてはいけないでしょうね。自分たちが信仰を守ってきたことは誇りだと思います。公開することは誇りを伝え関心を持ってもらうことになります。儀式を簡略化したり短縮化するとその儀式は形骸化するかもしれないけど、若い人に関心を持ってもらうためなら仕方がないことかもしれません。民俗的行事と同じ問題に直面しています。今守っている人が伝えたい意志や熱意を若い人にどうやって分かってもらうか、この点についてどうお考えですか。
鳥山…難しい問題です。堺目の集落では戦後、信者の戸数は九十戸から百戸ありましたが少しずつ離れていきました。三ヵ所合祀する時、手づる式にやめる人が出てきまして五十戸位になってしまいました。一昨年、行事を簡素化しましたが、その時は三十二戸でした。長男の若い人に声をかけているのですが、なによりもオラショを早く覚えてもらいたいものです。そうすれば伝える気持が出てくるのではないかと思っています。
馬場…島の館で隠れキリシタンの資料ビデオを見せてもらいました。短すぎてもっともっと見たかった。地区ごとにそれぞれ異なる行事があるのですから、ぜひ記録して欲しい。見ることにより感動は高まります。隠れキリシタンは東北の奥地にまで姿を隠していました。長い弾圧に耐えてきた祖先の魂は、日本化され独特の土着信仰に変化している。その実態は貴重です。
谷川…遠藤周作さんは『切支丹の里』を書いていますが、隠れキリシタンはカトリックの正統思想からはずれているという考えです。遠藤さんは同情しなかったのです。私は、潜伏キリシタンには二つあると思うのです。迫害された時に、宣教師から教えられた教義、バイブルを信じて潜伏しているキリシタンと、島原の乱の後のようにバイブル一つも持つことはできない時代の隠れキリシタンです。信者は教義を持たないと作らなくてはなりませ

 

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オマブリを切る。和紙を十字型に切ったオマブリは、山田では柱等に張られて魔除けとなる[山田]

 

 

 

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